観光

日本ははっきりと観光国になっていくでしょう。素の日本をイメージしてみてください。アジアの東の外れにある、海に囲まれた列島。国土の大半は山で、水をたたえた森林に囲まれ、あらゆるところに温泉が湧きだしています。千数百年、一つの国が続いたことによる洗練された伝統と美意識、そしてホスピタリティが育まれてきました。磨かれた手仕事による圧倒的な工芸の国でもあります。恵まれた自然を背景にその価値を高める建築や、そこに装着されるホスピタリティの質を考えると、こんな場所を世界が見逃すはずはありません。第二次世界大戦で大きな破壊を受け、その後の工業化とともに国土を「工場化」した経緯から、世界は日本に産業と文化の矛盾が露呈した居心地の悪い混沌を見てきました。日本人すらそうではなかったかと思います。しかしひととき混濁した水も、時が経てば澄んでいくのです。列島には、たわわに「半島」や「島々」が実っています。五島列島や下北半島など、従来ならば行きにくいところにも、水陸両用の小型機が新たな航路を拓いていくでしょう。
観光は世界最大の産業です。別の見方をすると、観光は純粋な貿易でもあります。フランスに行って土地の料理を食べるのは、個人でフランス料理やワインを輸入するのと同じこと。現在の日本では、海外に出かける人が、やってくる人の約2倍です。これを五分五分にするだけで約1500万人の旅客を確保することができます。これは決して目標値ではなく自然な成り行きだと思います。これまでは国内の旅行者を想定した観光産業が主流でしたが、サービスの対象は自然に国外の人々に向かって開かれていくでしょう。