我々は、日本だけでなくアジアの国々において、日本の活動と同様に未来の暮らしをどうつくっていくかということを考え、現地での活動をしてきました。日本での第1回目の研究会は2011年3月に始まりましたが、同じ年の8月から北京で調査や研究会も行っています。

そこでは日本の経験を輸出するのでなく、それぞれの国でその国の建築家や企業と一緒に調査や議論を始めました。以降毎月、各地での研究会や講演会などを繰り返しています。日本からも建築家や研究者が毎回加わり、お互いの知見を交換し、刺激しあいながら、多くの気付きを得てきました。

特に東京の展覧会にインドネシアと北京の建築家が参加するアジアデーを設けた事で、インドネシアで火がつき、2013年5月から継続的なトークセッションと研究会が始まりました。ジャカルタではアジアの研究をする「地球研」のメガシティー研究会のメンバーとの連携も活動の大きな助けになっています。以降中国での研究会も正式に発足、べトナムも2014年9月より正式にスタートします。現在(2014年11月)マレーシア、タイ、台湾などででも研究会の準備を進めています。これらの活動の成果をまずは各地でのシンポジウムというかたちで一度まとめ2016年4月以降、東京で展覧会を再度行い、その後各地で、それそれの国の建築家と企業とが共同で日本同様の展覧会を行っていく予定です。

発展するアジアと縮小する日本という対比がよく言われます。確かにアジアはまぎれもなく急速な発展をしています。しかし大都市の風景は、今やどこの国かわからないほど同じような高層ビルが建ち並んでします。多様化がキーワードだと言われる時代に、どの国に行っても同じようなショッピングモールに高級ブランドが並び、画一化が進んでいるのも現実です。大型の都市開発は、小さな路地裏の心地よい風景を壊し、そして人々の慣習やつながりまでをも壊していきます。近代化=西洋化の構造は、人々の欲望をも画一化していっているようにも見えます。そしてアジア特有の急激な経済発展は、貧富の格差を拡大し、税収入の蓄積がないまま、インフラへの投資予算を組めず、高層の足下にはスラムが取り残されるというのも特徴です。

様々な社会課題を抱えながらも、それをどう克服していくのか、未来の暮らしを考え、日々の暮らしに誇りと幸福をもてる暮らしの実現に向けて議論を重ねています。

それは単に過去を懐かしみ、近代化の開発を憂いている訳ではありません。新しい視点で都市を読み、経済の仕組みを読み解いていく事が必要だと考えています。新しい視点を発見し、社会の課題や矛盾と向き合いながら、それらを統合していく道筋を模索しています。今後はさらに研究会は活発に動き始めます。

各国の活動について
HOUSE VISION in ASIAは中国の研究会からスタートし、現在はインドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム、台湾での活動を開始している。各国の運営ミーティングでは、世話人・土谷貞雄がすべてに参加。運営をコーディネートしている。また原 研哉も各国の研究会立ち上げや講演などを積極的に行なっている。