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家をつかって
緑を増やしたい

アディ・プルノモ(インドネシア)

建築家取材 | 2015.11.16

アディ・プルノモ

柔らかな物腰で、笑顔を絶やさない姿は、インドネシアの代表的民族ジャワの雰囲気を表しているようだ。デザイン指向が強いインドネシア建築界の中で、アディ・プルノモ(通称マモ)はまれな存在だ。入念な調査と実験を繰り返し、常に光や風、熱環境へ建築的なアプローチで答える。マモは各住戸に①屋上緑化②雨水を貯水する機能を加える③ごみの処理④高層建築は風力発電などの自家発電設備の導入—を提案するなど、環境への影響を注視する。
 マモが環境やエネルギーに取り組むのは都市部での居住問題が年々悪化し、今後もその傾向が続くことが危惧されているからだ。ますます多くの人が都市に住むにつれて、居住環境は劣悪に、エネルギー問題が深刻になっていく。
 たとえば、都市部に住む人はこれまでのように大きな土地に住むことができなくなる。こうした問題に、光を多く取り入れるよう考慮した住居「studio cahaya」を設計。土地めいっぱいに建て、両側が壁で囲われるインドネシアの住居に着目した。studio cahayaではより多くの光を取り入れるためにヴォイドの角度を実験。住居内を斜めにヴォイドが貫くことで、光が壁面に反射し、壁に囲まれた敷地でも内部は明るくなる。南国では暑さも気になるが、光による温熱環境の変化や風の抜け方も考慮し、快適な内部空間を実現している。
 マモ自身はこうした取り組みにもっと多くの実験や調査が必要と考えている。「インドネシアの建築教育はまだ50年ほどの歴史しかなく、デザインに限らず、エネルギーの考察についても、国内の建築家よりも海外の手法を参考にしたものが多い」と自分たちの周辺環境への調査が少ないことを気にかける。今後はもっとインドネシアや南国の環境に注目した調査を重視した建築が作られることを期待し、自身で実験的な取り組みを進める。
 環境的な取り組みの中でマモが最も重視するのが緑地を都市に増やすことだ。都市化が進むジャカルタでは、2012年に商業など用途別にみた建造物は住宅が90%を占める。土地被覆全体では、ジャカルタの面積のうち約70%が住宅で覆われ、緑地はわずか9%という。建築をつくることは緑地を増やすこととは相反するために、マモは屋上緑化という手法でこれを解決しようと試みている。インドネシアでは冬がないために、屋根を作るだけで、人が暮らせる空間になる。マモも、「インドネシアの建築で最も重要な要素は屋根」と断言する。屋根を緑化し、どう有効活用するかが、今後のインドネシア建築を考える上での主題になってくるとの認識があるようだ。
 現在、エネルギーの有効利用の観点からリサイクル材に注目し、プロジェクトを進めている。インドネシアは世界有数の木材産出国でありながら、全国で住居のほとんどがコンクリートで建設されるようになっている。セメント工場がない地域でも同様の状況のために、木材を使えばエネルギー消費も抑えられ、運搬コストなども大幅に削減される。マモはこうした背景から「Forest City」構想を掲げており、現在はその手法の研究を進めている。
 南国のインドネシアでは樹木の成長も早く、自国の環境をうまく活かした建築の姿の模索が続く。建築家だけでなく、産業界など、他分野でもこうした認識が広がらなければ、マモの構想の実現は難しい。建築を作ることだけでなく、木材を中心とした生活全体を考えていく必要があるだろう。

Author: 高橋佳久

Studi-o Chahaya

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