さて、家はどうでしょう。前記のような未来において、家はどんな様相になっていくのでしょうか。HOUSE VISION 2013開催の折には、同時期に開催されていた展覧会「日本の民家」に大いなる刺激を受けました。集落としての美をたたえた民家のあり方は実に慎み深く感じられ、人々の欲望をせめぎあうままに許容する現代都市と、非常に大きな対照をなしていました。欲望が全方位に解き放たれていく今日の状況においては、かつての集落が持っていた美は永久に失われて戻りません。そのかわりに、私たちが手にする充足や誇りはどのようなものでしょうか。
このシンポジウムでは45名の建築家やクリエイターが、「家」を媒介とした提言を行います。その多くは、特定のジャンルの企業との協働を視野に入れつつ、具体的な家の提案を行っていきます。社会や経済を漠然と捉えるのではなく、身近な暮らしの営みに眼を凝らし、「家」をリアルに考えていくことで、鮮度ある問題点を見定めることができるかもしれません。HOUSE VISION の意味はまさにそこにあるのです。
私たちは、ここから、HOUSE VISION 2016の展覧会の構想をスタートさせたいと考えます。