和食の世界的なブームを経て、「うまみ」は、世界の食通の味覚の規準を変えていきます。微細な味覚領域の拡張により、ワインの世界においては辛口の領域が研ぎすまされ、日本産葡萄を使用した端麗な白ワインの評価が高まります。
移送の難しい日本酒は世界中で生産されはじめます。どこか芝居がかっていた和のレストランは、本来の渋みを効かせて世界に根をおろしていきます。侘びや数寄を楽しむ感受性は決して日本のものだけではなく、人間心理の普遍的な快適さの一角に機能する感受性だということが徐々に明らかになるのです。
またラーメンやうどんも、それを味わうポイントと作法が世界に認知され、人気を博していきます。世界の漁獲量の低下による価格の高騰と、水準の低い店が出過ぎたために、寿司の人気は相対的に低下していくかもしれません。
一方で、食を介して日本の繊細さへの理解が広がり、本場でこれを堪能したいという人々が一定の割合で現れます。探究心旺盛な海外からの旅行客は、富裕な人々もそうでない人々も、日本の深部を覗きたがります。ですから都市のみならず古都や僻地にも来場者があふれ、価値創造の気運が過疎地にももたらされるかもしれません。